
[コレクションⅢのメイキング映像]
こんな経験はございませんでしょうか。
アート作品のオリジナルを鑑賞した際には感動を覚えたはずなのに、その作品の複製が施された、売上のみを求めた商業的プロダクト ( 例えば立体物のARTをトートバッグやマグカップなどに安易にプリントする、、、 ) となった途端、あの時オリジナルの作品に感じたはずの感動が、、、起きない。
ドイツの思想家ヴォルター・ベンヤミンは著書 「複製技術時代の芸術作品」 で、このように表現しています。
「芸術作品が技術的に複製可能な時代に衰退するもの、それは芸術作品のアウラ ( Aura ) である」。
アウラとは、非常に感覚的で且つベンヤミン自体が明確に定義していないので、はっきりと申し上げられませんが、作品のオリジナルのみが持つ、「権威」や「ある種の神々しさ」、「今その時代のその場所にしか存在しないという有り難み」といった、もののようです。
アウラと記載するのではなく、オーラと記載すると感覚的にご納得頂けるのではないでしょうか。



[店頭に入荷中のコレクションⅣのアイテム。THIS IS NOT CLOTHINGのアプリケーションを通してTEEシャツのアートワークをスキャンすると現れるARです]
JAM SUTTONはアーティストであり、ファッションデザイナーではありません。
単純に「着る事の出来るART」と一文で形容するのは簡単ですが、彼がチャレンジしている事はさらにもっと深いのかもしれません。
JAM SUTTONは、アーティストである自身の作品を、TEEシャツという別の「形」に複製する際 ( ベンヤミンの言う所のアウラの衰退が生じる動作 ) に、AR ( 拡張現実 ) という今の時代の技術を用い、アウラの復元を図っているのかもしれません。さらに、ガジェットを通じてARを出現させるという行動を消費者に提供し体験して頂く事で、アウラの衰退から免れ、作品自体の魅力を引き上げようと試みているのだとしたならば、未来の新しいアートの形の可能性を提案しているのではないでしょうか。




さらに、メッセージが込められているであろうグラフィックや、本プロジェクトを通して伝えたい事を少しでも深く把握するべく、実際にデザイナーにインタビューを致しました。2016年秋冬シーズンにあたる最新コレクションⅣに関しては、身体が死によって地球へと灰になり回帰する際の変形をギリシャ神話の彫刻的な芸術を持って具現化しています。ギリシャ神話の最高神であるゼウスの息子とされるヒアキントスには恋人のアポロンという存在がいました。二人の仲に嫉妬をし、風の力を用い円盤をヒアキントスの頭部にあて殺害してしまったのが風の神ゼファー。ヒアキントスの頭部から流れ出た血に咲いた花がヒアシンスの語源であるという神話が残されています。
※上記のアートワークにある花々はこの神話からのインスパイアとなっております。
それでは、インタビューをご覧下さい。
Q : 旧約聖書やギリシャ神話、そしてルネッサンスやバロック期の芸術や思想を引用していますがなぜですか?無宗教な国民である日本人にとって、とても難解なので具体的に教えてください。
A : 私は常に人類の歴史に興味があります。クラシカルなアートワークや神話は過去の文明の中にあり、宗教的なアートワークはとても力強く人々を魅了します。私の仕事は、これらの歴史上のクラシカルな観念と私達の現在世界の関連の対比を模索することです。多くの類似点がクラシカルなアートにはまだまだあります。
Q : 現代の矛盾や無秩序に対して危機感を持っておられるように感じますが、具体的にJamさんが抵抗感を抱く事とは何ですか?
A : 私の作品は現在の私達を取り巻く世界と社会的情勢を吸い上げたものです。これは私の作品にとって重要な「今」を表す要素です。文化的にそして政治的に沢山の不安定さが世界にはあり、これが私の作品に様々な方向性をもたらせています。同じようにクラシカルなアートワークは現在の出来事に色々な影響を与えていると思うのです。私の作品も、政治に関する問題、又は消費者主義の高まりなど世界で何が起きているかにも影響されています。This is Not Clothingはこれらの事柄の上に成立しています。展示会のコンセプトを構築しこれらの要素を服に込めています。
Q : また、Jamさんが考える理想的な未来図をお聞かせください。
A : 私は世界がこの後どのようになるか解りません。これからの世界を考える時、"たくさんの退化"、"政治的"、"現在"といったワードを感じます。。。そしてそれはとても苦痛な。しかし良くなると信じています。この60年間でとても進化しています。しかし、ぞっとするような政治家達の行い、そしてねじれた狭い見解は悪化していくでしょう。
Q : コレクションⅢについてお伺いします、3Dを制作した上で、二次化した理由をお教えください。
A : 私の作品のメインとなるプライオリティはメッセージやアイディアによるコミュニケーション。2Dであっても3Dであってもこれは私にとってとても重要です。コレクションⅢにある彫刻は初めの段階で私は3Dデータとして作成しています。このプロセスで現実世界のモデルをデジタルデータの中に閉じ込める事にとても興味を持ちました。これによって彫刻としても表現でき、大理石のオブジェとしても、さらに洋服にプリントする事も出来ます。作品の表現の幅が広がると共に、This is Not Clothingのコンセプトにもなっています。
Q : コレクションⅣについてお伺いします、ARを用いた表現の意図をお聞かせください。
A : 私はテクノロジーにとても興味がありそして私の作品の実現に役立っています。私の彫刻は3Dスキャニングと最新の彫刻技術から作製しています。人々は彫刻を手作業によるものと、見ると思います。なぜならば、クラシカルなアートワークだからです。しかしルネッサンス期の彫刻はその時の最新の技術を使っていたはずです。つまり新しいテクノロジーを使うことで彫刻を制作をしていたのです。ARやVRなどはその他のテクノロジー手段としてファッションやアートを体感出来るものです。そしてそれは、カスタマー達にとって洋服上のアートワークを3次元にて体感できる完璧な方法だと思います。




■ARが純粋に面白い
■グラフィックが素晴らしい
■JAM SUTTONのメッセージや考え方に共感する
人それぞれ感じ方はあると思います。受け手次第で本プロジェクトの魅力の抽出箇所が変動して行く点も、単なるプリントTEEではなく、このアイテム自体がARTである理由の一つと感じます。
これらを含め、形こそCLOTHINGではあるものの、無形の価値を持つ「THIS IS NOT CLOTHING」なのではないでしょうか。
" 着る事の出来るART " と過大評価し、本質が伴っていない ( メッセージが全く無い ) 陳腐かつ名前だけのART TEEとは全く異なる、本物のART TEEを是非実際に店頭でご覧下さい。
Jam Sutton・・・
1986年生まれ。写真、3D彫刻、デジタルアートなど様々な分野で才能を発揮し活躍中。ファレル・ウィリアムス ( Pharrell Williams ) やN.E.R.D、ウィル・アイ・アム ( will.i.am ) 等といったアーティストとのコラボレーションも行っております。
■AWARDS
D&AD (Design & Art Direction) Student awards
finalist in the category of "Live Motion" at the Adobe Design Achievement Awards
membership to the International Society of Typographic Designers